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それが国外の諜報活動を行うCIAの特色だ。彼らの任務は軍事だけでなくテロ組織対策、政治情報、経済情報と多岐に渡る。しかも極東はロシア、中国、北朝鮮……米国仮想敵国があり、韓国、日本も情報を得るため活動内容は多い。ベネットはそれらの情報をそれぞれの作戦のチーフから受け取り、指揮をするのが仕事だ。
「その内の誰かが、忌々しくも今回のゲームに参加しておるようですな。獅子身中の虫とはこのことですか」
「ならこっちの情報が洩れている可能性は?」
「いや、それはありますまい。むしろ……だからこそ今回の襲撃があったのでしょう」
やれやれとため息をつくアレックス。こればかりはCIAの問題だからベネットに任せるしかない。ベネットもよく分かっている。
「私の信用を取り戻すためにも、この内通者はすぐにこちらで当たりましょう」
「それは構わないが」と、アレックスは電話を一瞥して言う。
「必ず生きて確保してくれ。どっかの誰かみたいに殺されまくってはどうにもならん。CIAお家芸の不穏分子抹殺による責任逃れだけは今回はナシにしてもらいたい」
「今回は大統領命令ですからねぇ」
ふふふっと笑うベネット。この男も底が見えない不気味な男である。だが少なくとも敵ではないようだ。今のところは……
アレックスは気を取り直し再び電話の前に立った。スピーカーフォンにしてあるからこの会話は全てユージに届いている。
「で、ミスター・クロベ。これから君はどうする?」
『日Nテレビに行く。その後セシルとJOLJUを拾って作戦会議だ。拓たちとも連絡をとらなければならない』
「じゃあ一つこちらからの情報だ。君から連絡が入る直前、ミスター・ナカムラ捜査官からメールで情報を得た。サタンを捕まえた、と。そして後で血液サンプルと指紋、顔画像をこちらに転送すると言っていた」
『サタンを捕えた件は俺も聞いたが、どうして血液サンプルなんだ?』
恐らく村田という名は偽名だが、米国人もしくはなんらかの諜報組織や裏世界に関係する人間であれば情報網にひっかかるかもしれない。血液サンプルの分析はサクラの発案らしい。サクラはあの島でサタン……村田という男について思い当たることがあるような素振りだということだ。相変わらずそれが何かは教えてくれない。
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