第1章

19/40
前へ
/40ページ
次へ
ここならば他の場所と違い森の木を気にすることはないし、<死神>たちを阻止しようにも拓たちは入れないし(サクラたちは入れるが)<死神>たちもまずは地下に行き自分たちの拠点に向かえる。そして防衛する拓たちからすれば、戦闘途中に自分たちの本拠地を急襲された形となり、行動に選択と決断を求められることになる。 「じゃあ、敵の侵入口は三箇所か?」と飛鳥。拓は深く頷く。 「問題はどう対処するかだな」  本当はこんな推測ではなく具体的に進入ルートを確認し対処すべきだ。だがその情報をユージに求めてもすぐに返信が得られるかは分からないし、危険な賭けだ。  地図を睨みながら……拓は一つの結論に達していた。 「煉獄方面の上陸組は捨てよう。今の俺たちで全部を阻止するのは不可能だ。なら、確実にヤバイやつは水際阻止にして、あとは島内で対処する」 「えーーーー ノルマンディー上陸作戦by紫ノ上島やないんか?」  飛鳥は不服そうに声を上げたが、サクラは黙って頷いた。  煉獄側からの上陸は数に限りがある。精々10人か15人ほどしか入って来られないはずだ。そして煉獄は海岸沿いの細道と地下通路にしか通じていない。細道の方は狂人鬼たちを閉じ込めていた隔離フェンスが残っているからそれを利用すれば簡単にバリケードは作れる。そして地下通路のほうも廃材を積み上げれば簡単には入って来られない。それは後で対応すればいいし、拓たちの人員を無駄に割かなくてもいい。 「戦える人間は限られているからな」  武器は確かにある。だが、一つ大きな問題があるのだ。  ……意図的に先制攻撃で人を殺すことができるか……  そう。この防衛作戦では<仕方なしの防衛殺人>ではない。こちらから積極的に攻撃する攻撃的防衛だ。片山ですら狂人鬼たちを撃った後嘔吐し冷静さを失った。  神経が野太く傍若無人な飛鳥ですら、人を殺した事はないし、本人も人を殺す意志はない。今だって会議に参加しているが自分が<死神>を殺すことなど想定すらしていないだろう、飛鳥はそういう人間だ。  つまり……  拓とサクラは顔を見合わせ、二人同時に目を閉じる。意見は合致した。  確実に、冷静を保ち計画的に敵を撃ち殺せる人間は、拓とサクラの二人しかいないのだ。拓やサクラだって好き好んで殺したいわけではないが、どうしてもやらなければならなければ撃てる。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加