第1章

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「じゃあ今後は拓、もしくはあたしの指示に従ってもらうわ。ただし岩崎さんと河野さんは銃をこっちに渡してもらえないとね。チームに入るなら銃の管理もあたしたちが行うから。一切の例外はなし」 「……まさに降伏の儀式ってヤツですか……」  やれやれ、と岩崎はため息をつき、ポケットの中からデリンジャーを出すとテーブルに置いた。さすがに当然のことだが子供のサクラにこうも高飛車に命じられることに抵抗を感じないわけではないようだ。河野も面白くなさそうな表情でしぶしぶと頷く。 「今の状況では従う以外道がありませんね」と25口径を置いた。  ……こういう時の心理戦と迫力はさすがやなぁ……  全体の様子を眺めて飛鳥は感心した。  元々サクラは人の上に立つのは嫌いだが、才覚は備わっている。こういう心理的な駆け引きをやらせれば誰よりも権力・人心掌握に強い。  サクラが高飛車な態度で全体をまとめる、というのも実は元々打ち合わせで決めていたことだ。本来は拓の役目だが、拓が言えば後先拓に対し悪感情が残ってしまうだろう。それは今後まずい。そこでサクラが憎まれ役を買って出た。さらに、どこかで一度サクラに力があること、決定権があることを全員に示さなければならなかった。すでにサクラの能力を知っている涼、片山や宮村はサクラの命令に従うが他がすんなりそうなるわけがない。そのためにあえて拓は席を外し場の支配権をサクラに委ねたのだ。  全員が恭順の意志を示したことを確認して、サクラは今後の動きについて話し始めた。 「あのサタンの演説通り、次の奴らの行動は今日の午後1時から。今10時だから2時間はぐっすり休めるから全員食事して寝て。明日の正午までは一睡も出来ない戦いになるのはサタンが言ったとおりだから。あたしと飛鳥は寝たから大丈夫、拓も海兵隊キャンプを経験してるから大丈夫。今は少しでも休んで体力回復させないと死ぬわよ」 「………………」  その時ドアが開き、拓が戻ってきた。拓はサタンと速見をそれぞれ監禁してきたのだ。  拓は全員を見渡し、サクラが権力の掌握に成功したのを確認すると皆の和の中に入っていった。 「皆さん休んでください。50人相手にどうするかはこれから作戦を考えます」  サクラと違い、拓の言葉は優しく、サクラが締め上げていた緊張感を一気に解した。作戦通りだが、拓の人徳でもある。
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