第1章

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「今相棒が立証するため動いていますが相棒は優秀ですけど事件の裏を取るのに時間がかかります」 「法執行官だからこそ…… 手順が必要だということですかな」 「そういう事です。米軍が動く素振りもモニターされているでしょう。爆弾のスイッチはこのゲームの企画運営者が握っています」 「軍が動けば我々は爆死……ですか」 と篠原が唸る。拓は頷く。 「腹立たしい事ですが、俺の相棒が運営者からそのスイッチを奪うか封じるかしない限りどうにもなりません」 「それなんだけどさ、捜査官」  今度は宮村が手を上げた。 「EMP爆弾使うって手段は?」  EMP爆弾……電磁パルス爆弾の事で、強烈な電磁波によって電子機器を焼き使用不能にする兵器だ。もし電磁パルス爆弾を島の効果範囲内で爆発できれば全てのカメラモニターや遠隔操作の爆発物は無力化できる。 「使えるワケないじゃんミヤムー」 答えたのはサクラだ。 「EMP爆弾は軍の秘密兵器だぞぉ? この事件は正しくはアメリカの事件じゃなくて大規模だけど日本の事件。日本にはEMP爆弾はないし、日本の場合、総理の判断だけじゃ実行できないし。日本の警察や自衛隊や総理にそんな決断は……」 「……期待するだけ無駄ね」  ガチガチの官僚縦社会の日本で、こんな超法規的な事件に即座に対応できるはずがないし、電磁爆弾とはいえ国内で爆弾を撃つことを現行法上認められるはずがない。訴えるだけ無駄だし混乱が大きくなるだけだ。特に黒幕に日Nテレビも入っているということであれば日本側の対応は期待できない。警察でどうにかできる相手でもない。 「だぁかーらぁ~」  チャキッ…… サクラはテーブルの上に置いたリボルバーを手にとって言った。 「戦って生き残るしかないのよ。あと26時間をね」 「………………」  サクラの言葉に皆沈黙した。もはや何も論議することはなかった。 東京都内  『そっちの捜査はどうだ? クロベ捜査官』 「こっちは……」  車は警察の覆面パトカーで、運転しているのは原警部だ。ユージはセシルを拾うため台場方面に向かって進んでいた。  説明しようとしたユージだったが、ふと嫌な予感を覚え会話を止めた。  一見何も問題のない風景、平穏な日常。だが、ユージは嫌な気配を感じ取っていた。日頃から生命を狙われている、数え切れないほど死闘を潜り抜けてきたユージにだけが分かる不穏な予感だ。
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