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ええ、ええ、それだけですよ。
執事と言えば一服盛るのがセオリーでしょ!
みたいな理由ですよ。
文句ありますか?
ないですね。
あってもスルーするのでよろしく。
「さてと、ではお楽しみのダンジョン攻略といきますかね」
セーブポイントである宿屋を出た俺は、街並みを観察する。
執事専用の屋敷ダンジョンは、街の中に存在する。
もちろん執事以外の侵入は許されないのだが、それでも街の中にモンスター入り乱れるダンジョンがあるというのは中々シュールな設定で悪くない。
この世界に安全が保証されている場所などどこにもないのだと言われているようで、警戒を促している感じで悪くない。
まあ実際安全なんだけどな。
街の中はバトル禁止領域だし、屋敷ダンジョンのモンスターがいきなり飛び出してくることもない。
だからこれはまあ、好みの問題だ。
目的地はここカルヴァトーレの街外れにある廃墟屋敷。
大昔の貴族が呪われた死を迎えたという曰く付きの設定だ。
首を吊ったとか、一族が殺し合ったとか、色んな噂が飛び交っている。
どんな噂だろうとゲーム上の設定なので生々しさには欠けるけれど。
それでも面白いと思う。
どうせなら骨アバターとか出てきてくれないかな。
怨念シリーズ、みたいな。
そんな事を考えながら屋敷に向かっていると、フレンドコールがかかってきた。
着信は『ナギ』。
フレンドリスト登録している悪友からだった。
『おっす親友。今日もゲーム廃人ライフ満喫しているかい?』
「してねーよ。俺は今日も三時間ほどでログアウトするつもりだね」
『ちぇー。もっとこう、VRに耽溺しようとか思わないわけ?』
危ないことを言わないで欲しい。
俺達が生きているのはあくまでも現実なのだから。
「ほっとけ。お前もそろそろ学校に来ないと単位がヤバいぞ」
『大丈夫。オレもう留年覚悟してっから』
「するな、そんな覚悟」
しかも軽い調子で言わないで欲しい。廃人どころかもう完全にVR住人と化している。
病気や怪我で入院して留年ならまだしも、ゲームに嵌って留年とか人間として駄目すぎる。
……ある意味『ビョーキ』ではあるのだろうけど。
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