第9話 閉塞的なミライ

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まるで妄想、映画やアニメの見すぎとでも言わんばかりの内容。 誰もが失笑してしまうような話に私は聞き入っていた。 「そのウイルスは空気感染型、爆発的に自己増殖を繰り返し、人間に感染した場合、四時間という短い時間で限りなく100%に近い確率で死に至らしめるという、最凶最悪のウイルスでした」 思わず背筋が震えていた。 その後どうなったのかっていうのが手に取るようにわかってしまうから。 「ある事故により、そのウイルスが流出。未曾有のパンデミックを引き起こしました。それにより世界の人口は激減、ウイルス開発者の奏は処刑され、その名前は悪名となってしまいました」 「そんな……」 「それだけではありません。あなたの娘の梓も、追い詰められ夫と共に心中。その兄である蒼に対しても世間は優しくありませんでした。妻に逃げられ、職も失い、今では廃人同然となっています」 未来の事、それは遥か先の事かもしれないけど、私の胸は押し潰されてしまいそうだった。 「だから僕はここにいるんです」
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