第9話 閉塞的なミライ

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あまりに衝撃的な事実に言葉一つすら出てこない。 「あなたには酷な話だと言うのはわかっています。けれど、どうか未来の子供たちの為にあなたの力を貸して下さい」 ポッドの中は涼しくて快適なはずなのに、私の身体からは汗が滲み出していた。 「あなたの子供に、孫に、そんな悲しい道を歩ませない為にも……。彼女達が生まれない未来を……」 私には好きな人がいる。 二人とも私の憧れの相手。 手を伸ばせばその二人に手が届く。 彼のお願いは、この二人に対する想いを犠牲にしろという事。 こんなにも好きになってしまった相手を遠ざけなければならない。 それは私が今一番失いたくないもの。 「……私……戻るね」 「そうですか……」 返事は出来なかった。
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