企画書

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以前それをした時、思っていたよりも血がたくさん出て、私は慌てて保健室に駆け込んだ。 怒られるかと思ったけど、先生は何も言わなくて、 優しく止血した後、何か嫌なことがあったのかって聞いてくれた。 その時、私は心の中に溜め込んでいたドロドロしたものを、初めて口から吐き出した。 先生はそれを、最後まで親身になって聞いてくれて―― 「天根。」 「はい。」 「このカッター、預かってもいいかな?」 「え?」 「切っちゃいけないとは言わない。 切りたくなったら、いつでもここに来て切ればいい。 だけど、切りながらでもいいから、俺に聞かせてほしいんだ。 君が困ってること、悲しんでること、恨んでること、君を苦しめてることの全部を。」 「先生・・・。」 「約束するよ。 俺は逃げない。 天根が卒業するまで、ずっと天根を支える。 だから、一人で背負わないで。」 「先生。」 カッターを手首に宛がった途端、そんなことを思い出した。 そうだ、あの時。 あの時を最後に、私は手を切らなくなったんだっけ。 切りたくなることは何度もあったけど、カッターを取りに行けば先生に会えて、先生に話すとスッキリする。 そうやって、私は支えられていた。 切ることをやめて生きてきた。 「・・・やめた。」 思い出したら、なんだか気持ちが穏やかになった。 切って大事になったら面倒だし、先生に心配をかけるのも嫌だ。 私はカッターを筆箱に戻し、今度こそ消しゴムを手に取った。 さ、早く企画書をあげなくちゃ。
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