企画書

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花崎先生がいなくなって、1週間が経つ。 一応転勤後も、メールのやり取りをしていて交流はあった。 でも、だいたい一日に数通程度。 頻繁に私の相手をしてられるほど、先生はヒマじゃない。 「ふう・・・。」 私は大きく息を吐くと、スマホをポケットに戻した。 休み時間からずっとトイレに隠れること15分。 始業のチャイムはとっくに鳴っている。 ずっとこうしてたいのは山々だが、授業中に10分以上退席すると欠席扱いになる。 そして欠席数は、学期末の三者面談で親にバレるので、戻らないわけにはいかなかった。 仕方ない、教室に戻らなきゃ。 「アマネー!!」 教室に戻るなり、宮間さんの声が廊下まで響き渡る。 「もー、どこ行ってたの? アマネがいないと全然進まないよー!」 「ゴメン、ちょっとお腹痛くて。」 「えっ、マジ?」 「でも、大分よくなったから。 待たせてごめんね。」 宮間さんに微笑み返すと、私は教壇に立つ。 「天根さん・・・。」 申し訳なさそうに声をかけて来るのは、もう一人の学級委員である吉良君だ。 会議を始めようとしたのだろうが、その甲斐は見られない。 教室を見渡せば、いつもと変わりない風景だった。 勝手に席を移動して雑談するチャラ男群。 席が遠くてもめげずに、わざわざ大声で会話するギャル群。 窓の外を眺めたまま動かない根暗男子。 ノートに落書きを続ける腐女子。 堂々とゲームしてるオタク勢。 騒ぐ人を風よけにこっそり雑談する女子グループ。 生徒の主体性を優先とか言って、私達に丸投げの有田先生。 「あの・・・僕、やろうとしたんだけど、その、誰も聞いてくれなくて・・・。」 「いいよ、大丈夫。 私も遅れてごめんね。」 「天根さん・・・。」 「後はやるから、書記をお願い。」 いつも通り吉良君にノートを渡すと、私は深呼吸をひとつ。 よし、覚悟は決めた。 「みんな、聞いて。 文化祭の会議、始めるから。」 喧騒の中を突き進む私の声。 だけど、余計な話し声を蹴散らすほどの効果はなく、殆どの人は見向きもしないままだった。 ああ、なんだか理不尽だ。 みんなは希望通りにならないとすぐ拗ねて、学級委員がしっかりしてないなんて言い出す。 なのに、せっかく場を設けてもこの有様。 自分たちの不真面目さを、私達のせいにするってどういうことだろう。
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