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「はぁ・・・。」
私は喧騒の陰に隠れるように、こっそりと溜め息をひとつ。
幸せだけじゃなくて、やる気まで逃げていく。
けど、ここで愚痴っても進まない。
ここで怯んだら何も変わらない。
私はチョークを手に取り、黒板にでかでかと書き記した。
調理室は早い者勝ち
↓
調理室は3年生優先
↓
重要!
ほかの2年のクラスより
早く希望する!
「え!マジ!?」
これに気付いたのは、大声で話していたギャル群の一人、杉田さん。
興味の強いことに対しては食いつきが早くアグレッシブだ。
「アマネ、もし調理室使えなかったら、食べ物とかムリ系?」
私は深く頷いた。
当たり前だよっ。
調理室以外のどこで料理するつもりなのっ。
なんて思いながら。
「マジか、ヤッバ!
食べ物以外とかダル過ぎて死ねるんだけど!」
「じゃあクレープやろうよ!クレープ!」
「あ!クレープいいじゃん!
決定でよくね!?」
「ちょっ、女子だけで勝手に決めんなよ!」
焦りで暴走するギャル郡に、チャラ男郡が反発する。
その他の皆さんは、思い切りのいいこの二勢力に意見する勇気がないらしく、黙り込んだままだ。
そのうちの何人か、こっそり雑談していた女子グループのみんなが、私に不満の視線を刺した。
「國分さん、なにか?」
「・・・別に、なんでも。」
私が尋ねても返事は素っ気ない。
國分さんは、再び後ろの席の友人たちと顔を合わせると、みんなで深い溜め息をついた。
それからまた、集団で私に嫌な視線を注ぐ。
・・・なんで、私に?
確かに積極的な人だけで話を進めるのはよくないだろうけど、消極的な人を待っているほど余裕はない。
いや、消極的というより、吉良君が話し始めた時点で聞いてないのだから、やる気はないはずだ。
それに不満を訴えられるなら、私じゃなくて杉田さんたちに直接言えばいいのに。
それが困難なら、私が代わりに言おうかと思ったけど、「別に」か。
なら、私にとってはどうでもいい。
クラスが一つになんてならなくても、結論だけ出れば十分だ。
そう肯定して、自分を守った。
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