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『書けない豚はただの豚だ』
気が付くと外はもう暗くなっている。
開いたワードの画面には、自分に向けた罵り言葉しか書かれていない。
天野友作は小説家である。
少なくとも、“自称”、小説家である。
中学高校とそれといって目立った特技は無く、勉強もそれなりだったため、普通の大学に行って、卒業した。
なんら特徴のない人生の中で唯一誇れることが、とあるウェブサイトで開催された小説大賞で、趣味で書いていた小説が審査員特別賞を受賞したこと。
賞金は五万円。
当時、時給八百円でバイトをしていた大学生の友作にとっては、想像を超える高収入だった。
ただ、これが地獄の始まりに過ぎないことに、友作は気づくことができなかった。
大賞ではなく、特別賞。
しかも、それから先に執筆した作品は何の賞も受賞していない。
有名な小説家から嬉しいコメントと共に受けた特別賞で調子に乗り、小説家を目指し始めてから早くも五年。
そりゃ、ミリオンセラーの作家から期待の新人作家と称されたら誰だって調子づくだろう。
友作を期待の新人と称したその某有名クソ作家は無責任な言葉を載せただけだったらしい。
だったら正直に、才能はないが読めなくもない、くらいの批評にしてくれればいいところでやめられたかもしれない。
五年だ、五年……。
貯金は無く、生活は苦しい。
それでも夢が諦めきれず、親にはあと一年やってダメだったら真面目に職を探すと約束させられた。
今現在、四月。
世間を沸かせる大作の締め切りは今年の大みそかである。
一年というのは、残酷なほどあっという間に過ぎるというのを、友作は嫌と言うほど実感していた。
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