13人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、大丈夫ですか?」
彼女の体に触れると、雨に濡れた体はとても冷たく、顔色もとても悪い。
一瞬怯えたような表情を見せてから、その子は友作の腕を強くつかんだ。
「うわっ……」
「お願い、助けて……」
「今、救急車を呼びますから」
そう言って携帯電話を取り出したのだが、その子はそうじゃないと首を振る。
「お願い、どこかここじゃないところに連れて行って……。 あの人が追いかけてくる……」
追いかけてくる……?
何かに追われているようには見えないが、その子の必死さに友作はなんとかしなくてはと色々考えた。
図書館は既に明かりが消えている。
きっと鍵がかけられてしまっただろう。
ここから一番近いのは、自分のアパートだ。
「ここから僕のアパートが近いんです。 そこでもいいですか?」
彼女は黙って頷いた。
「歩け……、ないですよね」
友作は彼女を助け起こし、パソコンを彼女に預けてから背中に乗るように促した。
友作は決して体格がいい男ではない。
その子はとても細く華奢なスタイルをしていたが、十キロ以上のものを運ぶのは友作にとって重労働だ。
「落としちゃうかもしれないから、しっかりつかまっててください」
肩に腕が回ってくる。
背中がじっとりと湿った。
とにかく、この濡れた服を何とかするためにも急いで部屋に向かわなければならない。
出せる限りの力を振り絞り、びしょ濡れになりながらもどうにかアパートにたどり着く。
そして、自分の部屋が二階にあることを呪いながら、やっとのことで部屋にたどり着いた。
「タオル持って来ます」
風呂とトイレはかろうじてついているが、男一人で暮らすための1K。
最初のコメントを投稿しよう!