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「た、高くねえか?」
「適当にそろえてくれって言ったのは先輩じゃないですか。 彼女が使いそうなものは全部別に入れておくので、そのまま渡してください」
「おお……、サンキュ」
財布の中から、紙のお金が全部なくなった。
アルバイトの給料日まであと三日。
どうやら、いよいよ実家から送られてきた生野菜だけを使って生活する時期がやって来たらしい。
「先輩、後で話を聞かせてくださいよ」
「お前に話すようなことなんかないよ……」
後ろで何か言っているのが聞こえたが、友作は全部無視して急ぎ足でアパートに向かった。
自分の部屋の前につき、鍵をあけ、ノックをする。
「あ、天野です。 入りますよ……?」
言ってからふと思う。
何で自分の部屋に入るのにこんなに気を使わなければいけないのか。
周りに彼女がいる同世代の男はごまんといるはずだが、奴らは日々どうやって生活しているのかが分からない。
恐る恐るドアを開けると、まだ風呂場からシャワーが流れる音がしていた。
「あの、着替えを持ってきたので、ここを開けても大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です。 ありがとうございます」
そっと風呂場を少しだけ明けて、隙間から着替えと、買ってきた物を全部、袋ごと中に押し込む。
それからすぐにドアを閉めた。
「えーっと、タオルは洗濯機の中に突っ込んであるので、それを使ってください……」
シャワーの音が止まって、彼女が上がってくる音がする。
友作は慌てて飛び起き、テレビの前に避難した。
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