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漠然だが其処には確かに違和感があった。
周りが大きく見えるのと、視界を遮る二人の、出で立ち。
其の姿が、最近のものとは違う感覚。
何故かはまだ、判らない。
「……。」
溜め息混じり
己が額に当てる、己が手。
視界に入れて、違和感が増した。
「若」
「気分が悪い……」
「誰か、若に白湯を―――」
小十郎が言い掛けた時。
「梵天丸っ!?」
豪快な足音が近付いたかと思う内に勢いよく障子が開く。
ズキン
傷が疼いた。
違和感が、寒気に近い感覚にまで研ぎ澄まされていく。
「これは、大殿!」
「何という事だ…梵天丸。あれほど【摩天楼】に近付いてはならぬと申したではないか!」
一同が半歩引いて片膝を付き、堂々たる風格の男に頭を垂れる中。
言葉を受けた藤次郎だけは、訝しげにその人物を見据えたままでいる。
「大殿、申し訳ございませぬ!全ては…守役でありながら止めきれず供を致した、某の責任!!」
「……成実、お前は何をしていた。」
「……父上」
「何…って……藤次郎と小十郎が行って、俺が行かない訳には…。」
「この…痴れ者が!!」
「…っ。…申し訳ありません。」
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