【覚醒】

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  涙を流した時にはまだ、半信半疑だった真実を 今、確める。 「……何と……。」 少し、複雑な感覚。 いつもより広く見える世界を、藤次郎は始めから疑っていたのだが。 (傷痕すら無いではないか…。) 思わず鏡に触れた。 ほぼ生涯を通して抱えていたコンプレックス―――【右目】は、其処にしっかり、瞬いている。 伊達【藤次郎】政宗。 何の因果か、彼は生まれ落ちて間も無く右目を患い、余生全てを半分の眼でしか見据える事が出来なくなった。 戦乱の世に翻弄されながら、家を守り通した最後の戦国武将。 らしく典型的な反骨精神の持ち主で、そのストイックさを後世は【独眼竜】と称えた …筈、だったのだが。 (ただの竜になってしまった…。) 不思議と満たされる心の贅沢さを堪能しながら、藤次郎は改めて自分の置かれた状況を、見回す。 (仏にでも見入られたのか。確かに、俺は……。) 【死んだ】。 その感覚だけは、はっきり身に残っている。 老いた自分は、死に方も決めていた。 誰にも気取られず、部屋で、一人で……ゆっくりと息を吐く。 呼吸が少しずつ浅くなって 夢の中へ深く、潜り込んで行った。 そして訪れた【闇】。 覚めない夢の世界を浮遊して、 そして――――  
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