【覚醒】

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  (そうだ。声。あれは…誰のものだったのか。) ……判る筈もない。 間違い無く、聴き覚えなど無い声だった。 (―――まぁ、良い。) 与えられたなら、再び全うする迄。 庭先に出た藤次郎は、風を浴びながら、両目でしっかり空を仰いだ。 「……何と広く、高い…。」 それは、当に忘れていた感覚である。 (手を伸ばせば、すぐに届きそうだと思っていたが……。) 遠近の整った視界の中に拡がる空は、恐ろしく広大だった。 隻眼で仰いだ時は常に、伸ばした手のすぐ先にあったものだ。 そして生前の藤次郎…もとい、【政宗】は、それをしばしば己の抱く野望に重ねていた。 「………成程、遠すぎる。」 失笑の混じるも、変に清々しく。 僅かに淀んで見える空は、かつて諦めた様々な野望を再び、思い起こさせていた。 「…小十郎は居るか。」 「此処に。」 「今から言うことを即刻、実行して欲しいのだが…。」 「…は。して、如何なることにござりましょうか。」 「俺を…独房に繋げ。」  
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