月花は憂う

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 がらんとした空間に、財布とかハンカチとか、数えるには片手で足りるくらいの所持品。  その中に、鳩の輪に一羽だけ孔雀が紛れ込んでいるみたいに、違和感を放つもの。  一晩寝かせてしまった申し訳なさから、座り方は自ずと正座になった。  腫れものに触れるようにそっと両手で掬い上げて、丁寧に包装を解いていく。  うんざりするほどの不器用さを発揮し、セロテープを剥がすのにかなり手間取って――ようやく現れたのは、高級感のある黒い箱。  一思いに、開いた。  そして瞬き。  真白い梱包材にうずまっていたのは、シンプルな造りの、黒い革製の――ベルト。  いや、形状はそれっぽいのだが、ベルトにしては小さ過ぎる。  けど、指は愚か、腕に付けるにしても大きい気がした。  金具の反対側――つまりこちらが正面になると思うんだけど、そこに桜の花をモチーフにした銀のチャームが付いている。  下の花弁の端は、桜色に輝く小さな石で、上品に飾られていた。  戸惑いのあまり、ひたすら瞬きを繰り返す。  槙田はこんなものを俺に付けろと言うのか。そもそも、これはどこに付けるものなのか。  腰でもなく、指でもなければ、きっと腕でもない。他にアクセサリーを付けるところなんて――  あっ、と声を漏らして身を微かに揺する。唐突に、答えらしきものが降りてきたから。  間際で躊躇して、しかし触れると、あの男の手みたいにひやと冷たかった。  自分の手のひらから熱を通わせないように、端っこを持って鏡に走る。  きっちり止まっていた金具を慎重に外して、そろそろと――首に、試してみた。  どうやら正解らしい。しっくりくるサイズ。  ひとまずほっとして、ようやく鏡を見る。  そこで、硬直した。 ――これ、  チョーカー、と呼ぶべきなんだろう。  いや、ネックレスか。分かんないけど。  でも。それにしても。 ――なんつーか、 「……首輪、っぽい、気が……」  首の両脇で留めた手をうっかり開いて、取り落としてしまいそうになった。
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