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薄れ行く意識……
腹に刺さった鋭利な刃が刻一刻と命の蝋燭を短くさせていた……
拘束されていた両手両足が次第に力を失っていく……
気の狂いそうな激痛すら失われていく……
消えゆく身体の熱が死のイメージを強く抱かせた……
そんな最悪なイメージ……
それすら失いそうになった時、俺はゆっくりと目を瞑る……
ボヤける視界が天幕のように閉じられていく……
残された僅かな隙間から俺が見たのものは……
炎と見間違えるような灼熱の髪を纏った少女の後ろ姿……
真っ赤に染まる少女の長い髪は、熱に揺らめくようになびいていた……
そして、少女の手には……
俺の記憶はここで途切れる……
次に目を開けた場所は、真っ白く染められた部屋だった。
鼻につく消毒液の匂い、身体中に付けられた機器のコード、口に添えられたマスクらが、今の俺の状態を表していた。
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