灼熱に燃ゆる少女

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約12時間前ーーーー 「ぜぇぜぇ……っくそ!どこに行きやがった!?」 取り壊し予定になっているビルの中で俺は人を追っていた。 180cmを超える身体を柱に隠しながら、追っている人には見つからないようにしている。 35℃以上ある気温のせいか、それとも緊張のせいか、額から流れる汗は長い前髪まで濡らしていた。 俺は炎のように真っ赤に染まっている前髪をかきあげる。 その時、遠くから何か小さな物が崩れるような音が聞こえてきた。 漏れないように小さく呼吸し、乱れた息を戻す。 あそこか……やっと見つけた…… 探していた人物を見つけた喜びに浮かれる訳でもなく、緊張した面持ちで手に握る日本刀をギユッと握りしめた。 その日本刀は抜刀されておらず、鞘に入ったままだ。 だが、その鞘を抜くような素振りは一切無い。まるで、鞘に収まった状態が、この日本刀そのものであると言わんばかりに。 戦闘態勢のまま柱の影に隠れ、俺は何かが崩れた方向へ神経を集中させる。 すると今度は一定のリズムで音が近付いてきたのであった。 それは足音。 徐々に大きくなる足音に合わせるように、俺の集中も増していく。 そして、その足音は柱の裏ぐらいで止まった。 俺は両手で日本刀を握りしめ、タイミングを合わせ柱から飛び出ようと両足に力を入れる。 心臓の鼓動が相手に聞こえるのではないかと錯覚してしまうぐらい、早鐘を打っていた。 日本刀を握る手は汗にまみれ、流れる汗が床に落ちる。それは、気温の高さのせいじゃなく、緊張によるものであった。 それでも俺は自分の鼓動にタイミングを合わせ、柱から飛び出ようと床を蹴ったのだ。 その瞬間、足首に異様な感触がまとわりつく。 痛みを伴うぐらいの感触に、俺は自分の足首を見た。 俺の視界に入ったのは、蛇が絡み付くように足にまとわりついた木の枝だった。
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