朝霧の海

2/6
前へ
/8ページ
次へ
朝は2時に起きて家を出る 大好きな父さんの後ろを付いていくと、南溟の海に出るための船着き場があって、祖父が遺した船がそこにある 私は父さんに抱きかかえられながら船に乗った もう一人で乗れるけれど、父さんに抱かれて乗るのが大好きだから言わない 小さくとも立派な舟には毎日手入れをした釣具、網が定位置にしっかり置いてある あと、父さんと捕った魚をつまみ食いするためのまな板と包丁 「水紋─みなも─、確認は終わったか?」 「終わったよ父さん。出港準備は完璧」 そうか。と言って少しだけ微笑む父さん あまり燃料は使えないから仄かな灯りしかないけど、その大好きな表情は良く分かる 「それじゃあ、出港しよう」 父さんが舟を漕ぐ為の櫂を持って、静かな海へ音を立てて入れた
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加