結菜1

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私が鳥居君と「その行事」に参加したのは、ほんの偶然だった。 5月の連休明け。 最初の土曜の、夜9時過ぎ。 街灯と月明かりだけの、薄暗い校舎の中。 そこを2人で歩いていた。 懐中電灯すら持たず。 彼が先導して、少し後を私がついて行く、といった形。 「も、やだ~~~~~っ!  窓から逃げていい?」 「駄目!警報機鳴っちゃうでしょ?」 もう! グイッと、腕を引っ張る。 鳥居君は華奢だ。 我が校の制服──紺色ブレザーに着られている、といった感じ。 背は流石に、私よりもチョット高いけど。 腕なんて細くて、枝か棒みたいで。 だから私は案外強いその腕力に驚いて、目を丸くする。 「わっ、わっ、わーーーっ!  いきなり、何すんの?」 「いや、前に来た方がいいのかな?  ……と、思って」 「そんなことしたら、余計怖いでしょ!  何かあったら、どうするの?  護ってくれる?  責任とってくれる?」 「わかったよ。  じゃ、後ろ行って」 諦めて、腰から左手を差し出した。 私はその手を繋ぎ、もう一方の手で彼の裾を掴んで、渋々ついて行く。 鳥居君、怖くないのかなぁ? 怖がりな私はソロッと様子を窺った。 頬が赤い。 でも気のせいかもしれなかった──だって、ここは夜の中。 窓から降り注ぐ東京の灯りは、校舎を不思議色に染めてしまうから。 私は勇気を出して、顔を上げた。 薄く色づいた闇の中。 廊下の奥に、夜を濃縮したような濃い色の空間が、とぐろを巻いて続いている────…。
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