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あの日。
アイツが家を飛び出して、俺の目の前から消えちまった時、
『大切なものは失って初めてその大切さに気付く』
そんな綺麗なものじゃなかった。
アイツが俺以外の誰かのところに行くのは許せなかった。
俺以外の誰かがアイツを…
…そんなの許せねえ。
アイツの居場所は俺だ。
アイツは…俺のところにいればいい。
一人の女にこんなにも執着している自分がみっともないとも思う。
メチャクチャにダセえ。
初めて味わう感情だけに…
どうしていいのか…
…わかんねえんだよ。
その時、部屋のドアが小さくノックされる。
会社では聞き慣れたその音は、サワさんでも親父でもねえ。
いつもよりさらにか弱い…
アイツの音だ。
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