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「会社では…俺たちのこと、別に隠さなくたっていいだろ?」
渉さんは私に確認するように言った。
渉さんの言葉は正直、うれしい。私を周りにもちゃんと位置付けをしようとしてくれている。
だけど、私は出来ることならしばらくは二人だけの秘密にしておきたい。
「…しばらく…二人の秘密にしませんか?」
私の言葉に渉さんは笑う。
気を悪くはしていないようだ。
「お前と…秘密ね。まあ…お前がそうしたいならそうしよう。…秘密の共有も悪くない」
渉さんはどこかうれしそうで、子供みたいに笑った。
「…はい。秘密です」
渉さんはもう一度私にキスをした後、会長が寂しがるからと言って下に降りようと私を促した。
私は長い廊下を渡り、階段を下りながら薄っすらと考えていた。
渉さんとのヒミツが共有できることはもちろんうれしい。
渉さんがそれを嬉しそうにしてくれることもなおさらに。
だけど、私は…
渉さんとのこと。一緒に暮らすことを内緒にしておきたい理由が…
もう一つあったのだ。
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