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「今日は来るってわかってたから、さっき鳳来亭でケーキ買ってきたのよ。望愛の好きなショートケーキ。渉くんも大丈夫かしら?」
母はそう言いながら紅茶の準備をしているのだろう。
「はい、大好きです」
…その情報は初めて知りました。
というよりも、本当かどうか怪しいところ。
「…渉さん、ショートケーキ…好きなんですか?初めて聞きましたけど…」
私は小声で聞いた。
「初めて言ったし、あんまり食ったことはない」
「それって…好きって言うんですか?」
「好きになるさ。お前が好きなんだろ?ナントカ亭のショートケーキ。お前が好きなもの、俺が嫌いでどうすんだよ」
「…そ、そうです…けど…」
私は言葉に詰まって顔を赤く染める。
渉さんはそんな私に追い打ちをかける。
「…これから一緒に食べる機会も増えるだろ?」
私は目を見開いて顔をさらに赤く塗るばかり。
二人の会話までは聞こえていないだろうけど、私たちのやり取りを見ていた母が言う。
「…仲がいいみたいで…安心した」
母な穏やかな表情で、ティーポットから最後の一滴を注いでいた。
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