有言実行

22/30
2314人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「今日は来るってわかってたから、さっき鳳来亭でケーキ買ってきたのよ。望愛の好きなショートケーキ。渉くんも大丈夫かしら?」 母はそう言いながら紅茶の準備をしているのだろう。 「はい、大好きです」 …その情報は初めて知りました。 というよりも、本当かどうか怪しいところ。 「…渉さん、ショートケーキ…好きなんですか?初めて聞きましたけど…」 私は小声で聞いた。 「初めて言ったし、あんまり食ったことはない」 「それって…好きって言うんですか?」 「好きになるさ。お前が好きなんだろ?ナントカ亭のショートケーキ。お前が好きなもの、俺が嫌いでどうすんだよ」 「…そ、そうです…けど…」 私は言葉に詰まって顔を赤く染める。 渉さんはそんな私に追い打ちをかける。 「…これから一緒に食べる機会も増えるだろ?」 私は目を見開いて顔をさらに赤く塗るばかり。 二人の会話までは聞こえていないだろうけど、私たちのやり取りを見ていた母が言う。 「…仲がいいみたいで…安心した」 母な穏やかな表情で、ティーポットから最後の一滴を注いでいた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!