有言実行

23/30
2315人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「…お母さん」 母がケーキと紅茶を持って私たちのいるテーブルに着いた。 「さ、食べましょ。望愛もこのケーキ、久しぶりでしょ?」 「…うん。」 「…お母さん。この間はごめんなさい…。急に来て…急にいなくなって…」 そこまで言うと、渉さんが言葉を遮った。 「申し訳ありません。そうさせたのは、僕のせいです。あの時は…彼女に辛い思いをさせてしまいました…」 渉さんの言葉に、母は静かに言った。 「…そうね。あの時の望愛は…見ていられなかったわ」 どこか渉さんを責めるような母の言葉に…私は少し驚き、そして胸の奥が痛んだ。 「申し訳ありませんでした」 渉さんは頭を下げた。 テーブルでは紅茶の湯気がか弱く揺れていた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!