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「…お母さん」
母がケーキと紅茶を持って私たちのいるテーブルに着いた。
「さ、食べましょ。望愛もこのケーキ、久しぶりでしょ?」
「…うん。」
「…お母さん。この間はごめんなさい…。急に来て…急にいなくなって…」
そこまで言うと、渉さんが言葉を遮った。
「申し訳ありません。そうさせたのは、僕のせいです。あの時は…彼女に辛い思いをさせてしまいました…」
渉さんの言葉に、母は静かに言った。
「…そうね。あの時の望愛は…見ていられなかったわ」
どこか渉さんを責めるような母の言葉に…私は少し驚き、そして胸の奥が痛んだ。
「申し訳ありませんでした」
渉さんは頭を下げた。
テーブルでは紅茶の湯気がか弱く揺れていた。
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