有言実行

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このことは、ケーキを食べる度に母に聞かされていたことだ。 回数は少ないけれど… 私と母と父、三人で一緒に食べたこともあるらしい。 母の一言で、話題がまた父に戻った。 「…今でもわからないわ。どうして父さんがあんなにも同棲をしたかったのか」 母はケーキを食べながら、父のことを思い出しているようだった。 フォークにすくった生クリームののったスポンジをぼんやりと見つめている。 「…聞かなかったの?」 私が言うと、母は小さく息を漏らした。 「聞いたわよ…でも教えてくれなかったの」 「そっか…」 「母さんの両親も『結婚をしてから一緒に暮らせばいい』って、別に父さんのことを認めてなかったわけじゃないの。でも父さんは『すぐに一緒に』の一点張り。母さん、両親との関係が悪くならないかとヒヤヒヤしたわ」 「…ふーん。何でだろうね?」 「わからないわ。…もう、聞けないんだし」 母はそう言って見つめていたケーキの一かけらを口に放り込んだ。 すると、渉さんが言った。 「僕には…わかりますよ」
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