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「…え?」
「…え?」
母と私の視線が同時に渉さんの穏やかな表情をとらえる。
渉さんはゆっくりと口を開いた。
「その理由も、お父さんが言えなかった理由も僕にはわかります。男は単純で意地っ張り。簡単なことです」
母も私も驚きながら…でも、渉さんの次の言葉を待っていた。
「『お母さんとずっと一緒にいたかった。いつも一緒にいたかった』…照れくさくて言えなかっただけですよ」
母の顔が赤くなる。
こんな母を…私は初めて見た。
そして、
母の目には涙が滲んでいた。
渉さんは続けた。
「僕は今、当時のお父さんと同じ気持ちです。望愛さんと一緒にいたい。離したくない」
渉さんは頭を下げた。
「望愛さんと一緒に暮らすことを…認めて下さい」
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