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「ぼ、坊ちゃま…!?」
「わ、渉!?」
驚く佐和子さんと会長の横で、私は一人で顔を真っ赤にして瞬(マバタ)きを繰り返していた。
あろうことか、渉さんはそんな私に言葉を投げる。
「なあ、望愛。そうだよな?」
直接、会長と佐和子さんの目を見ることは出来ないけれど、二人の視線が私に向いていることがわかる。
ますます赤みと熱を増す、私の顔。
渉さんはカップに手を添えたまま動きを止めた。
これは渉さんがお客様と話す時に見せる、相手の言葉…出方を待つ姿勢だ。
…私の返事を待っている。
この私に拒否権が許されたことは一度もない。
そしてこれからもきっと…
…ないだろう。
私は意を決して口を開く。
そう…
嘘は言わない。
私は…
…渉さんだけのもの。
「…はい」
顔の隅から隅まで赤みを帯びて、もう首まで熱かった。
渉さんは私が返事をすると、満足気にカップに口をつけた。
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