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「おっじゃましまーす!!」
二人は大きな荷物を抱えながら、我先にと部屋の中に入ろうとする。
狭い玄関で、自分の部屋の匂いを二人にはわからないようにそっと懐かしんだ。
夏の終わり。
けれど例年通りに残暑は厳しい。
締め切っていた部屋の中はサウナのようだった。
「暑ーーー!望愛エアコン!!」
「窓、窓!!」
理央と奈美に急かされて、エアコンを入れて、窓を開け放つ。
私にとっては…久しぶりの空気の入れ替えだ。
「冷蔵庫!冷蔵庫!」
その間にも理央と奈美は買って来た食材の心配をして、冷蔵庫を開ける。
「…って、何これ!?」
「ホントに何もないじゃん!」
空っぽの冷蔵庫を見て二人が驚く。
飲み物さえも入っていないのだから無理もない。
はっきり言って、不自然なまでに何もない冷蔵庫なのだ。
電源が入っていることが不思議なくらいに。
…実は…
たまに渉さんと二人だけで過ごすためにここに来る。
冷蔵庫の電源を切らないのはそのためだった。
「…だから、何もないって言ったでしょ?今日はちゃんと買い物してくる予定だったの」
私の言い訳を、空の冷蔵庫を覗き込みながら二人は聞いていた。
「ふーーーん」
「へーーーえ」
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