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渉さんを無言で見送り、その背中をぼんやりと見つめていた。
私はこともあろうに、エレベーターの箱の中で立ち尽くしていたのだ。
エレベータ-の扉が閉まる…
と思った瞬間、再び扉が開いて、それをこじ開けるように扉に手が掛けられた。
「すみませんっ!」
そう言って、一人の男性社員が乗り込んできた。
前のめりに突っ込むようにして入ったその男性は、急いでいたようで息が荒く、カラダを上下に揺らしていた。
私は心配になって我に返って、声を掛けた。
「…大丈夫…ですか?」
すると、前かがみになっていたカラダを起こして、彼が言う。
「…大…丈夫。ハア、疲れた…」
どの部署…だろう?
見かけない顔だった。
「お急ぎですか?…何階でしょうか?」
私はボタンを見ながら彼に聞く。
「6階。企画準備室」
「…はい」
私は6のボタンを押した。
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