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「…フッ」
室長が視線は液晶に向けたまま、指先だけを止めて笑った。
私は少し俯(ウツム)いた顔を上げた。
「…意地悪…だったかな?」
そう言って、室長は上目遣いに私を見る。
…もしかして…わざと…?
「…はい。少し…意地悪です」
「悪い。悪い。なんだかいじめてみたくなった。なんだか幸せそうだから」
その言葉に私はさっきと同じ反応をする。
胸の奥も同じように縮まった。
なのに、室長はさっきよりも大きく笑う。
「アハハ。ごめん。ごめん。そんな顔しないで。今度は意地悪過ぎたな」
「…室長…」
「…桐谷君は俺に気を遣う必要なんて何もないんだよ。…だいたい…渉が俺に何の気も遣ってないんだから。ハハ」
今度の室長の笑顔は今までの…
今までと全く変わらない自然な笑みだった。
その笑みは
本当に優しくて…
本物の王子様みたいだった。
王子様は幸せになる権利を持っている。
室長にふさわしいお姫様が
どうか…
現れますように…
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