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社長室の前でいつも通りのノックをしたつもりが、今日は朝から渉さんが変なことを言うのでわずかに力加減が変わってしまったかもしれない。
室長が渉さんは気を遣っていないと言っていたけれど、どうやら本当にそうらしい。
それが…
二人がいい関係を築いていく上で重要なことなのかもしれない。
「…失礼します」
渉さんは既にパソコンの画面を見つめてメールのチェックを始めているようだった。
マウスのスクロールボタンを動かしながら、上下に動く画面を見つめている。
私は渉さんの手を止めないように黙って左脇にコーヒーカップを置いた。
すると、すぐに渉さんの左手が伸びてくる。
そしてコーヒーを一口すすって私に言った。
「イチャついてねえだろうな?」
…もう。
「…ません」
「ホントか?」
「…本当です。今日の予定ですが社内予定は先週末に確認した通りです。社外予定は何かございますか?」
「…朝一連絡があって、9時半にJ社で杉本社長に会うことになった。その時間は確か…」
「営業部と企画部の合同会議です」
「ああ、ワリイけど、それ欠席。議事録と会議資料を後で持って来させろ」
「わかりました」
それから細かなスケジュールの確認をして私が部屋を出ようとすると、渉さんが私を引き止める。
「望愛」
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