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「君って、周りからどう思われてるか知ってる?」
「…え?」
…まただ。
「ビルの最上階にいる社長秘書。まさに高嶺の花だ」
彼はそこで言葉を区切る。
「『秘書』ってのはどこまでも妖しく妖艶(ヨウエン)な響きだ。男どもは君がこんな機密文書を作成してるなんて誰も思っちゃいない。ただ笑顔で社長に寄り添う君の姿だけ。…社長の言いなりになる…君の姿だけ…」
彼に触れられた手の甲から鳥肌が全身に伝って、気分が悪くなる。
…この人…本当に…イヤ。
私は彼の手を振り払って資料を奪うように手にした。
「…ありがとうございました」
私は彼を出入り口に促(ウナガ)した。
「またね。…社長によろしく」
彼の顔をまともに見ないままに私は浅い会釈で返した。
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