2044人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
シマダ書店は会社から少しだけ離れている3階建ての本屋さん。
品揃えも多いし、陳列の仕方もこだわっているので私もよく出入りしていた。
渉さんの車は…
その書店の駐車場にあった。
少しだけ周りを見回しながら、腰をかがめて窓から中を覗く。
中に渉さんの姿はなかった。
…あれ?
すると突然車のロックが解除される。
「おせえ。お前が遅いから1冊買ってきた」
渉さんは四角い紙袋を掲(カカ)げて言った。
「わ、渉さん、そんな大きな声で…。会社の人がいるかもしれませんよ」
キョロキョロとする私を渉さんは睨みつける。
「お前のその挙動不審な態度の方がよっぽど目を引く。バレたくなかったら普通にしろ」
「…はい」
渉さんが運転席に乗ったので、私も助手席のドアに手を掛けた。
…誰も見てませんように…
なんだかいけないことをしている気分になって、
私は変に焦ってドアの隙間からカラダを素早く滑り込ませた。
最初のコメントを投稿しよう!