オバケ-2

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シマダ書店は会社から少しだけ離れている3階建ての本屋さん。 品揃えも多いし、陳列の仕方もこだわっているので私もよく出入りしていた。 渉さんの車は… その書店の駐車場にあった。 少しだけ周りを見回しながら、腰をかがめて窓から中を覗く。 中に渉さんの姿はなかった。 …あれ? すると突然車のロックが解除される。 「おせえ。お前が遅いから1冊買ってきた」 渉さんは四角い紙袋を掲(カカ)げて言った。 「わ、渉さん、そんな大きな声で…。会社の人がいるかもしれませんよ」 キョロキョロとする私を渉さんは睨みつける。 「お前のその挙動不審な態度の方がよっぽど目を引く。バレたくなかったら普通にしろ」 「…はい」 渉さんが運転席に乗ったので、私も助手席のドアに手を掛けた。 …誰も見てませんように… なんだかいけないことをしている気分になって、 私は変に焦ってドアの隙間からカラダを素早く滑り込ませた。
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