オバケ-2

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「え、あ、あの」 私は慌てて体勢を整えて、小さく服装を直しながら何とか取り繕(ツクロ)った。 「あの…どうされましたか?」 私の問いに彼はニコリと微笑み、書類を持った手でノックのフリをした。 「失礼しまーす」 彼が室内に足を踏み入れながら私に言う。 「今日の社長出席予定の会議。俺、企画部だから。社長の仰(オオ)せのとおりに、資料持って来ました」 彼は手にしていた資料を私に差し出した。 「あ、すみません。ありがとうございます」 私がその資料に手を伸ばして受け取ろうとすると、彼はその手を引っ込めた。 …え? 手を差し出したまま彼を見上げて固まる私を、彼は笑った。 「アハハ。かわいい」 「…え?」 今度は声に出てしまった。 すると、資料を掲(カカ)げてそれをひらひらと揺らしながら彼は眉を上げて言う。 「これ欲しかったら、一回デートしてくれない?」
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