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翌朝。
「おはよう、桐谷くん」
会長のいつも通りの穏やかな笑顔。
「…おはようございます」
いつも通りに出来ない私の笑顔。
顔がじわりと熱くなる。
渉さんに満たされた夜の後では
みんないつもと変わらない日常なのに、私一人が変に照れていた。
私にとってはいつものパターンで始まった一日。
渉さんと別々に出社して、会社ではいつも通りの日常を取り戻そうとしていた。
先に着いた私が社長室の準備を整え、室長や理央と奈美と挨拶を交わすのにもまだ少し目が泳ぐ。
薄っすらと赤く染まった顔をみんなから背(ソム)けるように、デスクに着いて朝一番のメールを確認する。
昨日は渉さんも早くに帰宅したので、急ぎの用件がないかどうか確認が必要だったのだ。
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