怪奇現象

24/35

2091人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「…ったく、朝から最悪な電話だ。問題ねえと思うが、確かめてくる」 E社はグループ会社の工場。製造部門だ。大型機械の故障で、そのマシーンから水漏れがしていて工場の床が一部水浸しということだった。 機械の不具合というだけでは済まない重大な問題だった。 渉さんは自分から腕を伸ばしてお盆からコーヒーカップを手に取った。 「飲んでる場合じゃねえけど、毎日の日課みてえなもんだからな。俺の…まじないみたいなもんだ」 「…おまじない…ですか?」 「これ飲んでりゃ、上手くいきそうな…ってな」 渉さんはコーヒーを立ったまま飲み、その間にもすぐに出られるように準備を進める。 「何か報告は?」 「…特に…ありません」 …言えなかった。 こんな時に… 渉さんに余計な心配をかけたくなかった。 「また連絡する」 渉さんはコーヒーを飲み終わるとすぐに社長室を出た。 エレベーターまで送ると、扉が閉まる前に渉さんの携帯に電話が入り、渉さんは忙(セワ)しなくその相手と話し始めた。 私はエレベーターの外から渉さんに頭を下げて見送った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2091人が本棚に入れています
本棚に追加