怪奇現象

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二人のおかげで、私はお昼休みまで何とか平常心を保っていた。 何より、理央が言ったあの一言が利(キ)いていた。 『…そんな顔してたら仕事にミスが出るから…』 そう。私は渉さんの秘書。私のミスは渉さんの仕事に直結すのだ。 こういうところは…単なる友達では言えないことなのかもしれない。 親友で同僚。理央も奈美も秘書のミスがどれほど怖いものかよく知っているから。 そして、お昼休み。 最上階にはもともと役員と秘書しかいないので、階下のお昼休みのざわついた雰囲気も伝わってこない。 でも、今日ばかりはお昼のチャイムとともに全身の緊張を解(ト)いていた。 理央も奈美も部屋にいた。 もしかしたら、極力私のそばにいるように気を遣ってくれていたのかもしれない。 「あーー。お腹空いたあ」 本題に入る前に奈美が椅子に反り返って言った。 「ホント、じゃ、早く望愛の話を聞いちゃいましょ。室長もいないから今がチャンスよ」 「…うん」 私は二人に背を向けてデスクのパソコンに向き直った。 「…コレ…見て…」 私がマウスを操作し始めると、二人が椅子を引いて画面に近付いた。
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