怪奇現象

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「…わ、渉さん、仕事を持ち帰って来たんです。それをしなきゃ…ならなくて…その…予定です」 手振りを加えて必死に説明する私を渉さんは睨みつけながら口元では笑っていた。 「そうそう。それ、どうしても今日中にやんなきゃなんねえの。…カラダがもつか心配だぜ」 …わ、渉さん。 「そ、そうです。渉さんは忙しいですから。カラダは…資本ですからね、そうだ、ご飯!みなさん揃ったのでご飯にしましょう!手伝いますね!」 久しぶりの全員での食事。 佐和子さんは普段は一緒に食卓には着かないけれど、今日は会長の声掛けで一緒に席に着いた。 何でもない会話の中に、時折会長と渉さんの間には仕事の話が入り混じる。 渉さんと会長は滅多に面と向かって打合せなどはしていない。 こうやって、日常の中で報告し合うことで時間の無駄をなくし、コミュニケーションの一環としているのかもしれない。 少し長めの食事を終えて、片付けを済ませる。 会長から順番にお風呂に入り、それぞれの時間を過ごす。 渉さんは早々とお風呂を済ませて、リビングで会長とお酒を飲んでいた。 久しぶりに早く帰って来られたので親孝行というものだろうか。 私はそんな二人を微笑ましく思いながら、自分もお風呂に向かった。
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