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その日の午後、渉さんから連絡が入った。
『最悪だ』
渉さんの第一声。
『思ってたよりも修復に時間がかかる。今日一日はこっちにいる。会社には戻る予定だが、俺が戻らなくてもお前は先に帰っていい』
「わかりました」
渉さんは電話の向こうで大きなため息をついた。
そして、周りに人がいないのか、こう付け足す。
「お前のコーヒー飲みてえ…仕方ねえけどもう行く」
渉さんが電話を切りそうになるのを焦って止める。
「あ、わ、社長」
「何だ?」
「…お疲れさまです…」
「ん。じゃ」
渉さんに早く話したいけれど、今はもちろん、そのタイミングじゃない。
理央や奈美がいてくれて、すごく心強いけど
やっぱりこんな風に不安な時は…
…渉さんにそばにいて欲しい。
…早く…帰って来て…
私は携帯を胸に押し当てていた。
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