怪奇現象

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しばらくすると、社外に出ていた室長が戻り、デスクで書類を鞄に詰めて慌ただしく出て行こうとする。 「桐谷くん、まだ帰れないのか?」 「いえ、後少しです。社長が終日社外だったので連絡事項と明日の日程の調整と確認だけしていきます」 「そうか。私はまた会長の用件で外に出るが、一人で大丈夫か?」 「大丈夫です。戸締りもしていきますから」 「すまない。悪いけど時間がないので行くよ。お疲れさま」 「お疲れさまです」 私は立ち上がって室長にお辞儀をした。 一人になると肩の力を少し抜いた。 なんだか今日は一日中カラダが強張っていた気がする。 「…コーヒーでも飲もっかな…」 定時の休憩もろくに取らなかったので、私は一度伸びをしてから給湯室に向かった。 コーヒーを入れて、席に戻るまでに給湯室で一口すすった。 熱くておいしい。 私は少し薄めのブラックだった。 心地のいい湯気を揺らしながら秘書室に戻った。
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