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デスクに着いて、カップを口に運びながら渉さんの言葉を思い出す。
『…お前のコーヒーが飲みてえ…』
…飲ませてあげたいな。
夏でもコーヒーはホットを好む渉さん。
目の前でわずかに視界を歪ます小さな湯気を見て
渉さんが恋しくなった。
「…早く帰ろ」
私は独り言を呟いた。
今日は…話したいこともあるし。
渉さん、疲れてそうだけど…聞いてくれるかな…?
私が疲れをとってあげればいいのかな…
…どうやって…?
…ああして…こうする?
「私の…バカ」
私は自分でもわかるくらいに真っ赤な顔で、今日最終のメールを確認する。
送受信のボタンで受信されるメール。
1件、2件、3件…
…4件。
熱くなっていた顔から一気に熱が引いていく。
このアドレス…
表題は…
『秘書失格』
ほぐれかけていたカラダが瞬時に固まり、まるで凍りついたかのようだった。
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