第1章

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0 SIDE:樵(きこり)による昔話 昔じいさんから聞いたその人々の話は、小さい頃の俺には随分と突拍子もない、だけれど素敵なお伽話の一つだった。 澄んだ空気に満たされた綺麗な森にはそれはそれは綺麗な人々が住んでいるらしい。 歳は取らないし、大人まで成長したらそのまま老化なんてしない。賢くて徳のある人格者。葉っぱのような形をした耳と長い髪を持った麗人達。 俺達人間より遥かに優れたその人々は、 いわゆるエルフという種族だ。 古来より人間はエルフに敬意を払い、会うことも、まして捜しに行くこともない。 エルフの方も人間とは関わらず、森の中でひっそりと暮らしているらしく、自分の住む所から離れることは決してない―― と、俺は聞いていた。
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