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ッ.......ンッ......コンッ.....
夜霧が立籠める深い森の奥深く
小さな湖の畔にある山小屋から
扉を力無く叩くの音が響き渡る
「なんじゃなんじゃ、こんな夜更けに客とは珍しいのぉ」
真っ暗な山小屋の窓に
ぽぅっと優しい光が灯る
コンッ.......コンッ.......コンッ.....
「夜は冷えるのぉ....あぃあぃどなたかの?」
ぶるっと身震いし一人愚痴ると
扉の横にある小さな窓から
顔を出し真夜中の来客者を探す
扉を見るとそこに縋り付く様に
全身びしょ濡れの少年が
カタカタと震えていた
「おっと!こりゃいかん、今開けるわいの!」
老人が急いで扉を開けると
虚ろな顔の少年が顔を此方に向ける
「あな....た......がジョ....シュさん?」
歯をカタカタと鳴らし老人に問う
「む?いかにも儂がジョッシュじゃが・・・小童お主酒臭いぞ?」
それにこの甘ったるい匂い...
こりゃ蜜酒かの?確かに旬じゃが
こんな小童が密猟者とも思えん.....
それに何故儂を知っとるんじゃ?
「おい小僧、大丈夫かの?名はなん........なんじゃ?」
支えを無くしドサっと
力無く倒れ込んだ
少年の顔を覗き込むと
唇は青紫色に変色し
顔も白く生気が無くなり
身体は絶え間無く震え続けている
「こりゃいかん!低体温症になりかけとる!」
急いで少年を家にかつぎ込むと
びしょ濡れの服と装備を引っぺがし
暖炉の前に寝かせた
「にしても迷惑な小僧じゃのぉ」
一言愚痴ると暖炉に薪をくべ
チリチリと寝ている火を起こす
火が起きたのを確認し
奥から水を張った桶とタオル
暖かそうな毛布を持ち帰ってくる
少年の酒まみれの身体を
固く絞ったタオルで丁寧に拭き
毛布をかけてやると
近くの椅子えと腰を下ろす
「ふぅ.......してこの小僧は何者かいの?」
暖炉の前で毛布に包まり
静かに寝息を立てる少年を見て
考え込むが答えは出ず
むーんと独り唸り始める
「カッカッカ、よし!分からん!明日にでも聞くとして儂も寝るとするかの」
独特な笑い声を残し
ジョッシュは寝室へと向った
ふっ、とランプの火が
吹き消されると
二人の安らかな寝息と
虫の音が響き渡るいつもの
森へと戻っていった
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