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お日様も真上に差し掛かり
健康な者であれば外に出て
働いている頃
火の落ちた暖炉の前で
今だ毛布に蓑虫よろしく包まって
いる幼い少年が一人
「甘い.....甘い....ヴうっう.....」
昨日身体に被った蜜酒にでも
魘(うな)されているのか
しきりに甘い甘いと呟く
ギィイイ....
薪割りでもしていたのか
斧を担ぎ呆れた顔を
浮かべるジョッシュが帰ってくる
「そろそろ起きんかの?」
優しく呼び掛けるが全くの無反応
「こりゃだめじゃのぉ.....」
苦笑いを浮かべ斧を扉横にある
フックに引っ掛けると
少年の横に座り込み
自分の口に手を添える
「これっ!!はよぅ起きんかの!!」
少年の耳元で叫ぶ
「うわっ!!え?!なにっ!?」
少年は声に驚き毛布を跳ね飛ばし
飛び起き周りを確認する
「カッカッカ!やっと起きたかのぉ」
ジョッシュはしたり顔で
楽しそうに目を細める
「えっ?......あっ?おはよう?」
状況が掴めず困惑を浮かべ
少年は立ち上がると
辺りを見回しながら挨拶を交わす
「あぃあぃおはようさん、それよりも前......隠したらどうじゃ?」
少年を指差しながら
苦笑いを浮かべる
「前?.......は?裸!?なんで!?」
少年は慌てて毛布を拾い
ローブのように羽織りつつ
疑いの眼差しを向ける
「命の恩人に失礼な小僧じゃのぉ.......酒を被って凍えておったのを介抱してやったんじゃが、覚えておらんかの?」
少年は顔を顰めると
何かを思い出した様に
ワタワタと頭を下げる
「助けて頂きありがとうございました!!.........えっと、ジョッシュ・ビンセントさんですよね?」
恐る恐る顔をあげると
ジョッシュを見つめる
「いかにも、儂がジョッシュ・ビンセントじゃが、小僧名前は?ここは小僧が一人で歩く森ではないぞ?」
少年は目を輝かせると
興奮した面持ちで一歩前に出た
「僕はベル!ベル・フロルドです!!それと、先週15になったから小僧じゃないです!あっ、じゃなくて、ヘムの街で家の場所を聞いて此処まで来ました!あの、それでっ、弟子にして欲しくて、というか弟子にしてください!!」
一気に捲し(まくし)立てたかと思うと
急に顔色を変えしゃがみ込み
頭を抱え唸り始めた
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