それを実感すると、笑いが止まらなかった。止めようとも思わなかった。
「なんだよ、馬っぽい顔が更に馬面に近付いてるぜ?」
「あぁ、いいんだ」
笑いが止まってしまうことの方が嫌だった。馬田は笑い続けた。
「どうだ、希望は見つかりそうか?」
「いや、どうだろうな」
「でもよウマ、お前ここに来た時よりいい顔してるぜ?」
「そうか、それは良かった」
自然な微笑み、馬田はこの時間が続くならいつまでも続いて欲しいと思った。だが、そんな事は絶対にない。
「なぁ」
「どうした?」
初めて馬田から声をかけた。まさか馬田から言葉が来るとは思ってなかったのか、猿は頓狂な声で返した。
「ははっ、そこまでそっくりなんだな」
「な、なんだよ。どういうことだよ」
馬田は昔のことを思い出していた。この猿とサルとがそっくりであり、その姿を重ねて、ウマは笑った。
「なんだよ変な奴だな」
「お前にだけは言われたくないよ、猿なのに喋ってるんだから」
「よく喋るようになったな」
「そうだな」
ウマの口数も確かに増え、何かを諦めたような表情もなくなった。眩しいとは言えない中年の笑顔だが、いびつではなく、正真正銘の笑顔を見せるウマの表情を見て、猿は満足そうだ。
「じゃあ、俺の役割はここまでか?」
「もう少しだけいいか?」
「なんだよ、俺がいないと寂しいのか?」
「あぁ、そうだ」
ウマは迷わず、そう返事した。もうすぐ五時だ。閉園の時間まであと僅か。
「な、なんだよ急に素直になりやがって」
「ははっ、冗談さ。ありがとうなサルよ」
「おう、いいってことよ。またいつでも来いなウマよ」
それだけ言って、俺は動物園を後にした。妙に寂しいような気持ちになったが、なんとなく曇っていた心の中は晴れたような気がしていた。
******
男は独り、前を向いて街中を歩く。消えそうで消えない街灯が路地を小さく照らす。
「よお、元気そうだな今日は」
「あぁ、そうだな。なぁサル、一杯どうだ?」
「お? いいのか?」
「勿論、お前の奢りな」
ウマはそう言って颯爽と歩く。
「なぁウマよ、希望は見つかりそうか?」
「さぁな。だけど、今日は眠れそうだ」
ウマは笑っていた。
END
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