第1章

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それを実感すると、笑いが止まらなかった。止めようとも思わなかった。 「なんだよ、馬っぽい顔が更に馬面に近付いてるぜ?」 「あぁ、いいんだ」 笑いが止まってしまうことの方が嫌だった。馬田は笑い続けた。 「どうだ、希望は見つかりそうか?」 「いや、どうだろうな」 「でもよウマ、お前ここに来た時よりいい顔してるぜ?」 「そうか、それは良かった」 自然な微笑み、馬田はこの時間が続くならいつまでも続いて欲しいと思った。だが、そんな事は絶対にない。 「なぁ」 「どうした?」 初めて馬田から声をかけた。まさか馬田から言葉が来るとは思ってなかったのか、猿は頓狂な声で返した。 「ははっ、そこまでそっくりなんだな」 「な、なんだよ。どういうことだよ」 馬田は昔のことを思い出していた。この猿とサルとがそっくりであり、その姿を重ねて、ウマは笑った。 「なんだよ変な奴だな」 「お前にだけは言われたくないよ、猿なのに喋ってるんだから」 「よく喋るようになったな」 「そうだな」 ウマの口数も確かに増え、何かを諦めたような表情もなくなった。眩しいとは言えない中年の笑顔だが、いびつではなく、正真正銘の笑顔を見せるウマの表情を見て、猿は満足そうだ。 「じゃあ、俺の役割はここまでか?」 「もう少しだけいいか?」 「なんだよ、俺がいないと寂しいのか?」 「あぁ、そうだ」 ウマは迷わず、そう返事した。もうすぐ五時だ。閉園の時間まであと僅か。 「な、なんだよ急に素直になりやがって」 「ははっ、冗談さ。ありがとうなサルよ」 「おう、いいってことよ。またいつでも来いなウマよ」 それだけ言って、俺は動物園を後にした。妙に寂しいような気持ちになったが、なんとなく曇っていた心の中は晴れたような気がしていた。 ****** 男は独り、前を向いて街中を歩く。消えそうで消えない街灯が路地を小さく照らす。 「よお、元気そうだな今日は」 「あぁ、そうだな。なぁサル、一杯どうだ?」 「お? いいのか?」 「勿論、お前の奢りな」 ウマはそう言って颯爽と歩く。 「なぁウマよ、希望は見つかりそうか?」 「さぁな。だけど、今日は眠れそうだ」 ウマは笑っていた。 END

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