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「お待たせ」
あーちゃん達に気を取られている間に、高貴さんはもうテーブルの方へ行っていた。
トレーを置き、アイスコーヒーを椎名さんに渡す彼にぎょっとするあーちゃん。
すぐに必死の形相で、"誰?!"と口パクであたしに問い詰めて。
イケメンに目がない彼女が何を思っているのか、手にとるように分かる。
きっと椎名さんに驚き過ぎて、高貴さんを見てなかったんだろう。
とりあえず適当に笑っておいたら、猛者のごとく高貴さんの隣まで歩み寄り。
「あのっ、お名前っ、なんて言うんですかっ!」
「…は?」
本当、素晴らしく現金な奴だ…。
呆れ返っていたが、今更になって良太さんと昌也くんと三人残されたことに気づく。
何とも気まずい雰囲気が漂っている、ような気がする。
さっきから彼氏のことを追求してくる良太さんは、もうあたしの中では要注意人物。
昌也くんに関しては、危険人物だ。
もう、逃げよう。
それが一番の良策だ。
「あたし、ちょっとトイレチェッ」
「そういえば俺、見ましたよ!彼女、どんな人なんすか?!」
カウンター下に置いた使い捨ての手袋を取ろうと屈んだまま、固まってしまった。
…もうあの人は都内一位どころの騒ぎではない。
全国一、空気の読まない男だと、胸を張ってもいいと本気で思う。
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