プレゼントは夢幻の境地

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今日ほどヒロさんを、恨めしいと感じたことはなかった。 おかげで立ち上がりもできず、まだ聞こえて来ない彼の返答に心臓の鼓動は和太鼓の連打のようになっている。 「どんな人、想像してんの?」 高貴さんは、もしかしたら悪魔の化身なのかもしれない。 その悪意に満ちた問いかけは、もう、そうとしか思えない。 「どんなって、そうですねぇ…綺麗でスタイルよくて、モデルみたいな?あっ、色気とか欲しいっすね」 もう慣れているし、大体の予想はついていたのに。 耳にするとやはり、ぐさりぐさりと胸を突き刺さったように疼く。 …だから、言いたくないんだよ。 卑屈な自分が顔を覗かせて、隠しておいて正解だと虚しく我を慰め始める。 「それあんたの理想でしょ!ていうかちょっと黙っててよ!当てはまらない子が可哀想じゃない!」 フォローしてくれようとしているのはひしひしと伝わるし、とても有難い。 でも余計、悲しくなるよあーちゃん…。 膝を抱え、もはや体育座りの体勢で真下の台と床の隙間に視線を落とす。 髪の毛とホコリが一緒くたになって、気持ち悪いくらいに溜まっている。 はぁ…。 お客さんも来ていないし、気分転換に掃除でもしようかな…。 一人でいじける程、惨めはことはない。 気を立て直して、立ち上がろうとしたとき。 「…ず」 「えっ?」 「だから、鈴」 平然とした声色が、心臓を鷲掴んできて。 一瞬、何を話されていたのか理解できなかった。
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