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その腕は痛い位に強くそれでも優しい何かを感じずにはいられなかった。
「大丈夫だ…こんな傷…。それより…何故俺を助けた。」
彼は鋭い眼孔で私を直視した。
私はその眼差しに吸い込まれそうになりながらも口を開く。
「分からない。…でも…助けたいって思った。ただそれだけなの。それだけで人を助けたらいけませんか?」
私の問いかけに彼は黙って私を見つめていた。
そして彼は私の腕を強く握った手を静かに放し俯いた。
しばらく沈黙が続くと彼は急に笑い出した。
「何がおかしいんですか?」
私はそんな態度の彼を見て少しだけ助けた事を後悔していた。
「いや…悪いね。こんな凄い城に住んでる姫様がこんな阿婆擦れの男を助けるなんて誰も思いはしないだろうなって考えたらおかしくてさ…。」
この人…
もしかしたら…
「寂しい人なんだ…」
私は思わず言葉を漏らす。
その言葉に反応した彼は私を勢い良く押し倒した。
私は突然の事に身動きも取れない。
「誰が寂しいって?寂しいのはあんただろ?」
彼の言葉が私の胸を貫いた。
私は彼を黙って見つめていた。
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