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背中側で、オートロックの閉まる音。
胸がどくんどくんしてる。
心臓が口から飛び出しそう。
「シャワー浴びておいで」
部屋の中央まで入って、手に何か持ったサト君が言った。
あたし…
あたし、ここまで考えてなかった。
ただ、いつまでも美緒ちゃんなんて呼ばれてるのがイヤだっただけで。
そりゃ、いつかはサト君のこと、「彼がね…」なんて言えるようになりたいって思ってた。
真紀みたいに。
真紀…
…こんな時…真紀なら………
「美緒」
呼ばれて、ハッとして顔を上げる。
サト君はあたしの方に歩み寄って、正面からあたしの髪をすくいあげた。
「シャワー行かないの?
オレはそのままでもいいけど」
髪の間をすり抜けたサト君の手が肩に乗る。
あたしは、またうつむいて首を振った。
サト君が左腕に持っていたのは、バスローブ。
両手で受け取って、サト君の手をすり抜ける。
「…行ってくる…」
あたしは、シャワールームへと向かった。
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