─仮面の恋─ Act5.初めての夜

2/6
前へ
/38ページ
次へ
背中側で、オートロックの閉まる音。 胸がどくんどくんしてる。 心臓が口から飛び出しそう。 「シャワー浴びておいで」 部屋の中央まで入って、手に何か持ったサト君が言った。 あたし… あたし、ここまで考えてなかった。 ただ、いつまでも美緒ちゃんなんて呼ばれてるのがイヤだっただけで。 そりゃ、いつかはサト君のこと、「彼がね…」なんて言えるようになりたいって思ってた。 真紀みたいに。 真紀… …こんな時…真紀なら……… 「美緒」 呼ばれて、ハッとして顔を上げる。 サト君はあたしの方に歩み寄って、正面からあたしの髪をすくいあげた。 「シャワー行かないの? オレはそのままでもいいけど」 髪の間をすり抜けたサト君の手が肩に乗る。 あたしは、またうつむいて首を振った。 サト君が左腕に持っていたのは、バスローブ。 両手で受け取って、サト君の手をすり抜ける。 「…行ってくる…」 あたしは、シャワールームへと向かった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加