第1章 精獣とは俺ですか

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「実在?俺は、青葉 公介、学生だ。」 「学生?どこの?」 「日本東方大学。」 「え?」 サツキさんは、ポカンとしている。 なんか変なこと、言ったか? 三流大学だからかな? いや、とにかく、聞いた。 「俺は、なんでここにいるんだろう?」 自分でも間抜けな質問だ。 しかし、相手は俺がいることは不思議ではないらしいからな。 サツキさんは、俺をマジマジ見る。 「身なりが古いわね。」 はあ?  上着もズボンも、新しいんだが… ようやく、若い方の娘も立ち上がった。 サユリとか言う娘だ。俺は、ドキドキしてきた。これはおかしい。  一目惚れにしても、強すぎないか? サユリが俺に問いかけた。 「あなたって、いつの生まれ?」 声も心地よい。姉妹の声は似てるのに、サユリという娘の方の声には好感を感じる。  とりあえず、聞かれたことに答えた。 「あ…いつって、2001年だけど…それで答えになるのかな?」 女性二人は、同時に、 「2001?!何歳?」 と、おうむ返しに叫んだ。 なんだ? 「19歳だけど、何か悪いのか?」 サユリが噛みつかんばかりに、 「悪くないけど、悪いのよ!」 と、言う。 サツキさんは、俺の両肩に手を置いた。 「落ち着いて聞いて。」 距離が近い。いやぁ、それはそれでちょっと嬉しい。 たが、彼女の顔がマジ過ぎる。 だから、 「はい。」 と、素直に答えた。 サツキさんは、ゆっくりと言った。 「今は2057年。」 頭おかしい人たちなのだろうか? 怪しい宗教か? 「なんかの新興宗教の方? 間に合ってるんで、入らないよ。」 「真面目な話。」 「俺も真面目なんだが…そう見えないか?」 「本当の話。」 うそー? 俺は、苦笑いを浮かべた。 「と、言われても… あはははは、って感じだな。 なにか、証拠は?」 すぐに、黙ってサユリが障子を開けた。障子の向こうはガラスの扉だ。外の光が差し込む。 遠くに高いビル等がある。ここは東京郊外のようだ。みたことのあるビルだ。 光景自体、みたことがあるような気もする。 だが、 よく見ると、何かいつもと異なる。 ビルが半分くらい崩れてないか? 高速道路みたいな高架橋も、崩落しており、車は走ってない。何より、異様に静かだ。 「なんだこれは?」  俺は障子に歩み寄り、よく外を眺めた。 荒廃している。 人の気配がない。閑散としている。
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